お問い合せ

hifu・ka web

ステロイド外用薬のランクと剤形による使い分け

ステロイド外用薬のランクと剤形・基剤による使い分けについて、安部正敏先生にお話を伺いました。

ステロイド外用薬のランクと剤形による使い分け

Qステロイド外用薬のランクによる使い分けについて教えてください。

ステロイド外用薬は、人間の体内で分泌される副腎皮質ホルモンを用いた、抗炎症作用を持つ、湿疹・皮膚炎群の第一選択となる薬剤です。
強さによってストロンゲストからウィークの5つのランクに分かれ1)、病変の重症度や部位によって使い分けます。
重症度による使い分けについては、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインに示されていますが、概ね、急性で強い炎症を示す場合にはより強いランクのものを使用します。
部位別では、大まかに体、顔面・陰部、手のひら・足の裏の3つに分けて考えています。顔面・陰部は吸収率が高い2)ので、症状が強くてもミディアム以下を使用します。体、躯幹の一般的な湿疹・皮膚炎には、通常はストロング、症状が強いときはベリーストロングを使います。手のひら・足の裏といった、角層が厚く毛包脂腺系がない吸収が悪い部分などにはストロンゲストを使用することもあります。
OTCにもステロイド外用薬はありますが、ストロング以下のものしかありません。ストロンゲスト、ベリーストロングが必要な病態においては、皮膚科専門医の適切な診断の下に使い分けていく必要があります。
強いステロイド外用薬は局所の副作用や感染症の誘発を起こしやすいため、特にストロンゲストは湿疹をきちんと診られて、その病態を理解した皮膚科専門医が、抑えるべき炎症を速やかに抑えるときに根拠を持って使う薬だと思います。治そうとするあまりに安易に一番強いものを選択するのではなく、皮疹をよく観察して基剤の違いによる効果も考えながら適切なランクの薬剤を使用するのがよいでしょう。

安部 正敏 先生
ステロイド外用薬強度ランク一覧表

Qステロイド外用薬の剤形・基剤による使い分けについて教えてください。

剤形・基剤には、軟膏、油中水型クリーム、水中油型クリーム、ローション、テープ剤、スプレーなどがあります。
軟膏は油脂性でべたつきがありますが、どのような皮疹にも使えるので基本の薬剤です。水中油型のクリームは、水を与えた方がよい皮疹などに、油中水型のクリームは塗り心地の面から使うこともあります。お化粧をされる方には、軟膏ですとベタベタしたり化粧ののりも悪いので、クリームを薄く塗ったり、ローションを使用してある程度乾いた後にお化粧していただくよう提案します。ローションは被髪頭部に塗る場合に適しています。薬剤の吸収を良くするために密封療法を行う際は、テープ剤を使用すると簡便に行えます。背中など手が届きにくい箇所は、スプレーを使うと便利です。
なお、背中などの手の届きにくい箇所は可能ならご家族の方にお薬を塗ってもらうようお願いしています。患者さんは一人で病気のことを悩んでいる場合も多く、“皮膚に触って心が伝わる”ということにより、ご家族の方と患者さんの間に共感や信頼関係が生まれ、良い結果につながることがあります。

Qステロイド外用薬を他剤と混合する際、気を付けることがあれば教えてください。

1対1で混合すると、強さも副作用も半分になると思っている方がいますが、これは誤解です。ステロイド外用薬は飽和状態に薬剤設計されていますので、かなり薄めても強さは変わりません3)。強さや副作用を弱めるために混合するのは意味がないことになります。一方、ステロイド外用薬と保湿剤を混合すると、前述のように効果はほとんど減弱せずトータルの量が増やせますので、全身に症状がある患者さんにとってはコストダウンになるというメリットがあります。また、ステロイド外用薬と保湿剤を適切に組み合わせると、ステロイドの吸収が良くなるというデータもあります4)。なお、組み合わせによっては、混合すると乳化が破壊されて分離や力価の低下が起こったり、また細菌汚染の可能性もあります。混合する場合は、科学的根拠を持った組み合わせで混合し、適切に保管することが重要です。
根拠もなく見様見真似で外用薬を混合するのは好ましいことではありません。

文献

  • 1)公益社団法人日本皮膚科学会,一般社団法人日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018 日皮会誌 128(12) 2431-2502,2018
  • 2)Feldman RJ, et al. Regional variation in percutaneous penetration of 14C cortisol in man.J Invest Dermatol, 48, 181-183,1967
  • 3)川島真 血管収縮試験 日獨医報 38(1) 13-20,1993
  • 4)大谷道輝 ステロイド軟膏剤の混合による臨床効果と副作用への影響の評価 医療薬学29(1) 1-10,2003

医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック院長

安部 正敏 先生

ご経歴

  • 1993年 群馬大学医学部 卒業
  • 1998年 群馬大学大学院医学研究科博士課程 修了
    群馬大学医学部皮膚科学教室 助手
  • 2001年 アメリカ合衆国テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員
  • 2003年 群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学 講師
    群馬大学医学部附属病院感覚器・運動機能系皮膚科 外来医長
  • 2013年 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 副院長
    医療法人社団廣仁会褥瘡・創傷治癒研究所
    東京大学大学院医学系研究科健康科学•看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野 非常勤講師
  • 2018年 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 院長
安部 正敏 先生

【著書】

  • たった20項目で学べる 在宅 皮膚疾患&スキンケア 学研メディカル秀潤社
  • たった20項目で学べる スキンケア (皮膚科学看護スキルアップシリーズ)  学研メディカル秀潤社
  • ジェネラリストのための これだけは押さえておきたい皮膚疾患 医学書院
  • 皮膚科専門医が見た! ざんねんなスキンケア 学研
  • ほか

【編集】

  • エビデンスに基づくスキンケアQ&A―あたらしい皮膚科治療へのアプローチ 中山書店
  • ジェネラリスト必携! この皮膚疾患にこの処方 医学書院
  • ジェネラリスト必携! この皮膚疾患のこの発疹 医学書院
  • ほか

【 関連製品 】

  • “ダイアコート”
  • “ドレニゾンテープ”
  • “ビーソフテン”

トップ