2019.12.18
ステロイド外用薬の副作用と患者指導のコツ
Qステロイド外用薬の副作用にはどのようなものがありますか。
副作用には全身性と局所性があります。ステロイド外用薬で発現するのは、ほとんどが局所性の副作用です。
最も多いのは、酒さ様皮膚炎と皮膚の菲薄化です。顔に強いステロイド外用薬を使っている患者さんが赤ら顔で悩んで来院されたり、皮膚が薄くなって出血しやすくなるといったことがときどき見られます。
次に多いのが感染症です。一般細菌、真菌のほか、毛包虫(Demodex)も増加します。皮疹が治らないと思っていたら実は細菌感染が起こっていて、膿痂疹性湿疹になっているといったことがあります。しかし、副作用に感染症があるからといって、抗生剤を予防的に投与するのはお勧めできません。感染症は強いステロイド外用薬ほど起こりやすくなりますので、症状と薬の強さを総合的に判断して、適切な強さのステロイド外用薬を選ぶことが重要です。
長期的に同じ薬剤を使っているとタキフィラキシー(tachyphylaxis:馴化)が起こることがあります。そうした場合には1か月くらい休薬することが必要となり、リバウンドによって患者さんが非常に辛い思いをされることになります。現在は、免疫抑制外用剤があるため以前よりは対処の手段が増えましたが、ステロイド外用薬は効果が高い一方で、漫然と使用していると副作用や馴化が起こることがあるので、強度選択や使用期間には常に注意を払っていただきたいと思います。
Qステロイド外用薬の副作用として色素沈着を気にされる患者さんが多いようですが。
“ステロイド外用薬を塗ると色が付く、色素沈着が起こる”とよく言われていますが、これは誤解であり、ステロイド外用薬を使用している患者さんに見られる色素沈着の多くは炎症後色素沈着です。すなわち、不適切なランクのステロイド外用薬を使ったために炎症が十分抑えきれず遷延化した結果、メラニンが真皮に沈着したり、血管から出血したヘモグロビンがヘモジデリンとなって、炎症後の色素沈着を起こすのです。
Qステロイド外用薬を必要以上に怖がる患者さんがいらっしゃいます。どのように指導されていますか。
そのような患者さんには、私はまず「ステロイドは、ヒトの血液の中にたくさん存在するものなのですよ」とお話しします。すると、たいていの方は驚かれます。一般の方は、ステロイドが副腎から分泌されるホルモンだということを知らないことが多いのです。「私たちの体内で働いているホルモンを少量皮膚に塗ることが、そんなに怖いこととは思えません。怖いことが起こるのは、使い方が間違っているからではないでしょうか」と言うと、少し安心されて、話を聞いていただけるようになります。そこで、症状の説明、薬剤の説明、使い方の説明などお話ししていくと、徐々に誤解が解けて使っていただけるようになることがあります。
Qアドヒアランス向上のコツがあれば教えてください。
「薬をきちんと塗らないと治らない」と言われるとプレッシャーになるとおっしゃる患者さんがいらっしゃいました。そこで、私はあえて「ほどほどで良いよ」「見えるところや、かゆいところだけで良いよ」と手抜き治療を推奨しました。できる範囲で続ければ良いと思うと患者さんは気楽になり、むしろアドヒアランスが向上するケースがあります。
医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック院長
安部 正敏 先生
ご経歴
- 1993年 群馬大学医学部 卒業
- 1998年 群馬大学大学院医学研究科博士課程 修了
群馬大学医学部皮膚科学教室 助手 - 2001年 アメリカ合衆国テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員
- 2003年 群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学 講師
群馬大学医学部附属病院感覚器・運動機能系皮膚科 外来医長 - 2013年 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 副院長
医療法人社団廣仁会褥瘡・創傷治癒研究所
東京大学大学院医学系研究科健康科学•看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野 非常勤講師 - 2018年 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 院長
【著書】
- たった20項目で学べる 在宅 皮膚疾患&スキンケア 学研メディカル秀潤社
- たった20項目で学べる スキンケア (皮膚科学看護スキルアップシリーズ) 学研メディカル秀潤社
- ジェネラリストのための これだけは押さえておきたい皮膚疾患 医学書院
- 皮膚科専門医が見た! ざんねんなスキンケア 学研
- ほか
【編集】
- エビデンスに基づくスキンケアQ&A―あたらしい皮膚科治療へのアプローチ 中山書店
- ジェネラリスト必携! この皮膚疾患にこの処方 医学書院
- ジェネラリスト必携! この皮膚疾患のこの発疹 医学書院
- ほか