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ケロイド・肥厚性瘢痕に対するステロイドテープ剤の使い方

ケロイド・肥厚性瘢痕治療におけるステロイドテープの使用方法について、小川令先生にお話を伺いました。

ケロイド・肥厚性瘢痕治療におけるステロイドテープ剤の位置づけと実際の使い方

Qケロイド・肥厚性瘢痕治療におけるステロイド剤の位置づけについて教えてください。

ケロイド・肥厚性瘢痕は真皮網状層の炎症を特徴とする疾患であることから、ステロイドテープ剤が治療の第一選択として位置づけられています。
ケロイド・肥厚性瘢痕の治療については、『ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018』1)2)(以下、診断・治療指針)が示しているように、特にケロイド・肥厚性瘢痕の治療を専門とされていない一般施設では非侵襲的で比較的安全な治療を、ケロイド・肥厚性瘢痕の発症早期から開始します。
さらに、治療アルゴリズムは小児(20歳未満)と成人に分けていますが、いずれにおいても第一選択はステロイドテープ剤です。

Q小児ではステロイドテープ剤をどのように使用するかを教えてください。

小児は皮膚が薄く外用薬が浸透しやすいため、弱いステロイド(フルドロキシコルチド)のテープ剤が第一選択です。これを3ヵ月間を目安に継続貼付し、効果があればさらに3ヵ月間継続貼付します。効果がない場合は強いステロイド(デプロドンプロピオン酸エステル)のテープ剤に切り替えてさらに3ヵ月間継続貼付します。
ステロイドテープ剤の貼付で患部が軟化・平坦化したら、貼付時間・間隔を徐々に減らし、保湿剤(ヘパリン類似物質)などの外用剤に変更します。効果がない場合は、ステロイドテープ剤による治療に固執することなく、ケロイド・肥厚性瘢痕の専門施設に紹介していただきます。(図1)

図1 ケロイド・肥厚性瘢痕治療アルゴリズム -小児-(20歳未満を小児の目安とする)

Q成人ではステロイドテープ剤をどのように使用するかを教えてください。

成人になると皮膚は厚くなります。さらに、ケロイド・肥厚性瘢痕は患部にかかる張力がリスク因子になりますが、成人ではかかる負荷も強くなり、動く力も強くなるため、強いステロイドテープ剤が第一選択となります。
ステロイドテープ剤を3ヵ月間を目安に継続貼付し、効果があればさらに継続貼付します。患部が軟化・平坦化したら、貼付時間・間隔を徐々に減らし、保湿剤などの外用剤に変更します。効果がない場合はステロイドテープ剤の貼付を継続しながら、さらにステロイドの注射剤(トリアムシノロン)を適宜併用します。それでも効果がなければ専門施設に紹介していただきます。(図2)

図2 ケロイド・肥厚性瘢痕治療アルゴリズム -成人-

Q可動部の病変にはステロイドテープ剤をどのように使用すればよいかを教えてください。

ケロイド・肥厚性瘢痕は日々の張力で炎症が強くなり悪化します。特にケロイド・肥厚性瘢痕が可動部位にある場合は、ステロイドテープ剤は病変部の最小限に貼付し、さらに張力を軽減するためにテープやジェルシートを病変よりも大きくしっかりと貼付して病変部をしっかりと固定することもよい方法です。

Qステロイドテープ剤はどれくらいの期間、使用すればよいかを教えてください。

ステロイドテープ剤の継続貼付によって病変は徐々に軟化し、平坦化してきます。ただし、ステロイドの効果を得るためには、ステロイドテープ剤を最低でも3ヵ月間は必ず継続貼付していただきます。弱いステロイドテープ剤であっても6ヵ月間の継続貼付で効果を実感することができます。ケロイド・肥厚性瘢痕は長期間の治療が必要であり、完治するまで治療を継続することが大切です。
程度にもよりますが、ステロイドテープ剤の効果が確認できれば、さらに1~2 年は治療を継続します。

Qステロイドテープ剤の使用を終了する目安を教えてください。

病変部の全体が軟化・平坦化して、触っても病変が判別できないようになるまで、ステロイドテープ剤の貼付を継続していただきます。
ステロイドテープ剤の使用で改善の兆候がみられながらも、病変の一部分だけが硬く隆起しているような場合、ステロイドテープ剤は隆起している部分だけに貼付するというように、貼付の面積を徐々に狭めていくことも必要です。わずかでも隆起が残っていると、そこから悪化することがあるからです。

引用文献

  • 1)瘢痕・ケロイド治療研究会 ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018(全日本病院出版会)
  • 2)Ogawa R. Diagnosis and Treatment of Keloids and Hypertrophic Scars-Japan Scar Workshop Consensus Document 2018. Burns Trauma. 2019 Dec 27;7:39. doi: 10.1186/s41038-019-0175-y. eCollection 2019.

日本医科大学大学院医学研究科 形成再建再生医学分野 大学院教授
日本医科大学付属病院 形成外科・再建外科・美容外科 部長

小川 令 先生

ご経歴

  • 1999年 日本医科大学医学部 卒業、日本医科大学形成外科 入局
  • 2005年 日本医科大学大学大学院 修了
  • 2005年 日本医科大学形成外科 助手、会津中央病院形成外科 部長
  • 2006年 日本医科大学形成外科講師、同大学付属病院形成外科 医局長
  • 2007年 米国ハーバード大学ブリガムウィメンズ病院形成外科組織工学・創傷治癒研究室 研究員
  • 2009年 日本医科大学形成外科 准教授、同大学大学院メカノバイオロジー・メカノセラピー研究室主任研究員
  • 2015年 日本医科大学大学院医学研究科 形成再建再生医学分野 大学院教授、同大学付属病院形成外科・再建外科・美容外科 部長
小川 令 先生

【著書】

  • エキスパートが答えるDr.小川の傷や傷あと治療Q&A 南江堂
  • ここまでできる ケロイド・肥厚性瘢痕の予防と治療 日本医事新報社
  • 局所皮弁 克誠堂出版
  • 瘢痕・ケロイドはここまで治せる  克誠堂出版
  • アトラス きずのきれいな治し方 改訂第二版-外傷、褥瘡、足の壊疽からレーザー治療まで 全日本病院出版会
  • Color Atlas of Burn Reconstructive Surgery  Springer社
  • Total Scar Management Springer社
  • ほか

【 関連製品 】

  • “ダイアコート”
  • “ドレニゾンテープ”
  • “ビーソフテン”

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