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手湿疹治療の基本とちょっとしたコツ

皮膚疾患治療シリーズの情報誌『 To Dermatologist 』をwebコンテンツとしてご紹介していきます。

.手湿疹診療の基本的な考え方

手湿疹は日常診療でしばしば遭遇するcommondiseaseの一つであり、職業病としての側面を有することから、最近では世界的にも注目されています。手湿疹は患者さんの日常生活のみならず職場での何らかの影響による社会損失を招くことから、手湿疹の適切な治療は患者さんのQOL 向上にとどまらず、社会貢献にもつながります。

そこで、日本皮膚科学会では手湿疹に対する標準的で正しい治療を普及させることを目的に、『手湿疹診療ガイドライン』(以下、ガイドライン)を作成しました1)。手湿疹の治療法は、ガイドラインに示されている「手湿疹診療アルゴリズム」(以下、アルゴリズム)が基本となります。

本稿では、ガイドラインに基づいた手湿疹治療の基本的な考え方と、治療における“ちょっとしたコツ”をご紹介します。

.手湿疹診療の実際 -診断-

1.発症までの“時間”と発症の“部位”に注目する。目次へ

ガイドラインの冒頭に、「原因を確定し、その原因との接触を断つことができれば根治できる疾患である」とあるように、手湿疹の診療において原因を確定することは非常に重要です。

問診では、手湿疹の原因として「思い当たるものはないか」「触れるとその後に何となく症状が現れたり悪化したりするという印象はないか」「日常生活の中で常に触れるものに刺激物はないか」というように、患者さんの日常生活や仕事・作業などをお聞きしながら、日常生活で触れているものを、時間をかけて丹念に確認します。

ここで注目していただきたいのは、原因と思われる物質に触れると必ず症状が現れる(悪化する)のかどうか、そして発症(悪化)までの“時間”です。短時間ならⅠ型アレルギーの症状も念頭に置きます。

もう一つ重要なのは“部位”です。原因と思われる物質に触れた部位だけに発症するか、それは手背か手掌なのか、利き手かどうか、皮膚症状が手首にも及ぶか、さらには全身にまで及ぶかを確認することも原因物質を確定するためには必要です。

2.刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー型手湿疹を常に念頭に置く。目次へ

手湿疹の表現型は多彩です。発症機序による分類についてはガイドラインに詳細を紹介していますが、中でも「刺激性接触皮膚炎」「アレルギー性接触皮膚炎」「アトピー型手湿疹」の3つは念頭に置く必要があります。なぜなら、これらの病態は原因と密接に関係しているため、その病態から治療法が見えてくるからです。

刺激性接触皮膚炎は物理的・化学的な刺激が直接皮膚を傷害することで生じる皮膚炎です。たとえば、頻回の手洗いによってさまざまな新規物質が角層に侵入しやすくなり、手湿疹の原因となります。アレルギー性接触皮膚炎は、アレルゲン感作のステップがあるため、同じものに触れると反復して同様の皮疹を発症することから原因を比較的特定しやすいという特徴があります。成人のアトピー型手湿疹の特徴としては、手背が割れることがあります。手背の炎症は手掌のそれに比べ強いことが多いです。また、利き手の症状が強い場合は日常的に触れるものが考えられるなど、表現型から原因物質や機序を推測できます。

3.思うような治療効果が得られないときには診断を見直す。目次へ

形態的に鑑別を要する疾患と鑑別のポイントについては、ガイドラインに記載されているとおりであり、常にこれらの疾患を見逃さないことが重要です。

アルゴリズムでは、治療を開始して4週間の経過観察後に治療効果を評価することが記載されています。適切な治療法と思って治療を続けても期待される効果が得られない場合、治療のSTEPを上げる前に一旦立ち止まり、鑑別を要する疾患ではないか、診断を見直すことも必要です。

4.必要に応じてパッチテストやプリックテストを行う。目次へ

アルゴリズムでは、治療法はSTEP1 ~ STEP4の4 段階となっています。さらに「適切な診断と悪化要因の評価」をすべてのSTEPの共通項としており、治療のどのSTEPにおいても悪化要因を考えることが重要であることを示しています。原因の除去は症状を回避する最高の治療法だからです。

パッチテストは日常生活の活動に制限が生じたり、時間的な負担のかかる検査です。患者さんにはパッチテストの意義とタイムコースなど具体的な方法を十分に説明します。「原因がわかれば、それから回避することであなたの症状は今後、現れなくなる可能性があります」とパッチテストの意義、得られるメリットをきちんと説明すれば、たとえ患者さんは負担が大きくても積極的に検査を受けてくださいます。

また、パッチテストの結果が陰性であったとしても、その結果は患者さんにとって有益な情報となります。

プリックテストは何かに触れた後、短時間で皮疹が出現するというようにⅠ型アレルギーが疑われる場合に施行します。

5.手湿疹治療においては手以外に症状がないか確認することも重要。目次へ

手湿疹患者さんの治療においては、“木を見て森を見る”ことも重要です。手湿疹というと手だけを注目してしまいがちですが、その他の部位も見ることが原因を探るうえで参考になることが多くあります。

たとえば、耳の後ろや背中にも病変があればシャンプーの影響を疑うこともできます。頸などに機械的に塗ったものと一致するような皮疹があるとパフューム(香水など)を疑うこともできます。このように、手だけではなく他の部位を注目することも重要です。

6.患者さんとの対話による“キャッチボール”が原因の特定、診療に対するモチベーションの向上の一助となる。目次へ

手湿疹の原因や悪化を特定する際、悪化する状況を問診で伺うことが重要です。悪化するきっかけを意識していない患者さんもいらっしゃいます。その場合は、今後悪化したときの状況を意識していただくようにお願いし、次回受診時に報告をしてもらうのです。悪化要因に意識を向けることで「これかも?」といったように気づきにつながることがあります。難治な手湿疹症例では対話を繰り返すこと、いわば会話の”キャッチボール”が重要になってきます。

この過程は患者さんの医療従事者に対する信頼関係の構築に役立ちます。さらに患者自身の気づきが手湿疹の悪化予防のヒントになるわけですから、日々の生活における効果的なセルフケアの実施につながります。その効果を自ら実感することができれば、その成功体験が治療アドヒアランスの向上という好循環をもたらすのです。難治例の中にはこのような形で改善につながる症例もあり、コミュニケーションの重要性を痛感しています。

文献

  • 1)日本皮膚科学会、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会、手湿疹診療ガイドライン委員会:手湿疹診療ガイドライン. 日皮会誌 128(3); 367-386, 2018
  • 2)公益社団法人日本皮膚科学会、一般社団法人日本アレルギー学会、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018.日皮会誌 128(12);2431-2502, 2018

手湿疹治療の基本とちょっとしたコツ

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