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尋常性乾癬治療の基本とちょっとしたコツ

皮膚疾患治療シリーズの情報誌『 To Dermatologist 』をwebコンテンツとしてご紹介していきます。

.尋常性乾癬治療の実際

乾癬治療の基本的な考え方は『乾癬治療のピラミッド計画:2017年改訂』(飯塚 一: J Visual Dermatol 16:850-851, 2017)に示されているとおりです1)。中でも外用療法はその根幹をなすものであることは言うまでもありません。

また、乾癬はメタボリックシンドロームとの関連や、心血管イベントのリスク因子であることが指摘されていることから、患者さんの生活指導も重要です。

- 乾癬の外用療法 -

3.ステロイド外用薬は高ランクから開始し、副作用の発現がみられたら
塗布回数を減らす。目次へ

乾癬治療におけるステロイド外用薬は、より強いランクのステロイドを使用することが基本です。私は中途半端な強さのステロイド外用薬を漫然と使用するのではなく、強いランクのステロイド外用薬で速やかに皮膚の状態の改善を図ることを目的に、ベリーストロングかストロンゲストを選択します。

ただし、ストロンゲストを長期間塗布し続けると、皮膚の萎縮など局所の副作用の発現頻度が高くなるため、そのような場合は塗布回数を減らすことが必要です。患者さんは一旦良くなると薬を変えたがらないので、ランクダウンはせずに毎日の塗布から週に数回の塗布というように塗布回数を減らしていくようにしています。

一方で、高齢患者さんで皮膚が菲薄化している場合は、通常よりも低ランクから治療を開始するか、最初からD3外用薬や配合薬を使用することもあります。配合薬のステロイドのランクはベリーストロングですが、活性型ビタミンD3が配合されることでステロイドによる皮膚の萎縮が軽減されるため、ステロイド外用薬の単独塗布よりも良いと思います。

4.外用薬の塗布量は、“塗ったらテカテカになって、軽く付けたティッシュペーパーが
落ちない程度に塗ってください”と説明する。目次へ

外用薬の適切な塗布量は、Finger Tip Unit(FTU)が一般的に広く紹介されていますが、必ずしも全ての患者さんがきちんと理解されません。そこで私は、“塗ったらテカテカになって、軽く付けたティッシュペーパーが落ちないような程度に塗ってください”とわかりやすく説明しています。

それでも塗布量が少ないようなら、“今塗っている量の倍くらいの量を塗ってください”“次に来られるまでに、このチューブがなくなるくらいに塗ってください”と説明しています。一方で塗布量が多すぎるようなら、“もう少し減らしてください”というように、受診の間隔と外用薬の減り具合から塗布量を調節しています。

5.重症例には配合薬から治療を開始する。目次へ

重症の患者さんの場合、私は配合薬から治療を開始しています。症状が改善してきたらD3 外用薬と配合薬を、たとえば平日はD3外用薬、週末は配合薬という使い方や、高齢患者さんの場合は治療をよりシンプルにするために塗布回数を減らすこともあります。

高額の経済的な負担が困難な患者さんや、従来から使用しているステロイド外用薬を好まれる患者さんにはステロイド外用薬を使用しますが、皮膚の萎縮などステロイドの副作用がみられる場合は配合薬の使用を薦めています。

顔面や頭部のようにステロイドの経皮吸収が良い部位については、顔面にはD3外用薬、頭部には配合薬(ゲル製剤)やステロイドのシャンプー製剤などを使用しています。

また、外用療法では治療に難渋する爪病変については、外用薬を爪の全体だけでなく爪の周囲の皮膚にもしっかりと塗布していただきます。

6.D3外用薬が効果不十分の場合は他のD3外用薬に切り替えると、
患者さんの治療に対するモチベーションの向上にもつながる。目次へ

D3外用薬には現在、3種類の製剤がありますが、効果は同等という印象があります。そこで私は、ある製剤の効きが悪くなってきたら、同じ製剤を漫然と継続使用するのではなく、他の製剤に切り替えています。乾癬の患者さんは新しい治療に対して積極的に取り組まれる傾向があるので、このように目先を変えることが患者さんの治療に対するモチベーションの向上にもつながります。

D3外用薬を使用する際には、高カルシウム血症の発現にも注意が必要です。定められた使用制限量を守ることはもちろんですが、特に使用開始後1~2ヵ月間は診察時に疲れやだるさ、喉の渇きなど、二日酔いのような症状の有無を聞き、さらに心配なら血中カルシウム濃度を測定しています。腎機能が低下しているような患者さんにも注意が必要であることは言うまでもありません。

7.皮疹が厚く治りにくい部位や亀裂ができて痛みを伴う場合には
ステロイドテープ剤を用いるとよい。目次へ

肘や膝、足の裏や腕などで皮疹が厚くて外用薬の単純塗布では治療困難な部位や、生物学的製剤の使用でも皮疹が残るような場合などの局所的に重症な皮疹や、手や足の皮疹に亀裂ができて痛みを伴う場合にはステロイドテープ剤は有力な選択肢となります(図)2)

図3.アトピー性皮膚炎のリアクティブ療法


また、皮疹が苔癬状になって鱗屑がひどい場合にステロイドテープ剤を貼付することで鱗屑が落ちなくなる、あるいは掻破行為による皮疹増悪の防止、痒みを伴う部位の皮膚の保護効果などの利点もあります。

何より、テープ剤の利点は必要な大きさに切って貼るだけなので治療時間は短く、貼付後のベタツキがありません。ご自宅での治療時間が30分/日以上かかると、7割を超える患者さんが治療をストレスと感じるという報告がありますが(中川 秀己, ほか:日皮会誌 115:1449-1459, 2005)3)、その点でステロイドテープ剤は短時間で治療できるという利点もあります。

8.外用薬は季節や患者さんのライフスタイルにあわせて剤型を使い分ける。目次へ

ステロイド外用薬には、軟膏剤、テープ剤の他にもクリーム剤、ローション剤があります。たとえば、夏場などの暑い時期にはローション剤、乾燥しやすい冬場には軟膏剤やクリーム剤を使用するのも良いと思います。また、患者さんのライフスタイルも考慮して、たとえば平日の忙しい時にはローション剤、週末は軟膏剤などを塗布する、というように患者さんに使い分けていただくこともあります。

ただ、保湿剤の剤型に関するアンケート調査によると、患者さんは季節にかかわらず早く治療が終わり、塗布後も下着が汚れない製剤をより好まれる傾向があることが示唆されていますので4)、患者さんの好みを聞くことも重要です。

9.乾癬治療における保湿スキンケアは症状改善効果も期待できる。目次へ

保湿スキンケアは、外用療法の効果の向上にもつながりますし、かゆみなどの症状の改善効果も期待できることから非常に重要です。特に、冬場などの乾燥しやすい時期には外用療法に加えて保湿剤による保湿スキンケアも行います。また、皮疹の改善に伴って肌の乾燥が目立ってくるような場合も保湿スキンケアが必要です。

保湿剤にも剤型の選択肢が多くあるので、外用療法と同様に季節や患者さんのライフスタイルを考慮し、さらに患者さんの好みを聞きながら使い分けることが、保湿スキンケアの継続につながります。

- 外用療法以外の治療法 -

10.光線療法は頻回の照射が効果的。目次へ

光線療法は現在、ナローバンドUVBとエキシマライトの2つが主に行われており、PUVAは以前に比べて使用頻度は低下しています。光線療法は有効な治療法であり、医療費もさほど高額ではありません。しかし、頻回の照射が必要なため、外来患者さんには頻回に通院していただかなければなりません。

たとえば、ナローバンド UVBで効果を得るためには最低でも週2回の照射が必要です。エキシマライトは難治な病変局所に対して照射することでかなりの効果が得られますが、ナローバンド UVBと同様に最低でも週1回の照射が必要です。

11.内服療法には、アプレミラスト、レチノイド、シクロスポリンとMTXがある。目次へ

内服療法には、アプレミラスト、レチノイド、シクロスポリンとMTXがあります。MTXは間もなく「公知承認」の見込みですが、使用可能な施設は日本皮膚科学会の生物学的製剤使用承認施設(承認施設)に限られます。したがって、乾癬の内服療法として広く使用できる薬剤は現在のところ、アプレミラスト、レチノイドとシクロスポリンです。

アプレミラストは安全性や使い勝手の良さから広く選択されている薬剤であり、内服療法の第一選択薬と位置付けられるようになると思います。ただし、重篤な感染症や過敏症、重度の下痢などの副作用発現に注意が必要であることや、高齢で血圧が高値傾向の患者さんにはレチノイドを使用します。また、アプレミラストは症例によっては効果発現までに最低でも16週間はかかるので、短期間で早期に症状を改善したい症例で使用可能例にはシクロスポリンを使用します。その他、アプレミラストの問題点としては高薬価のため、患者さんの経済的な負担が大きいことがあげられます。

シクロスポリンについては、漫然と使用していると腎障害や血圧上昇をきたすことがあることに注意が必要です。

12.生物学的製剤は病態や症状、さらに自己注射ができるか、
注射時の痛みに耐えられるか、などで使い分ける。目次へ

現在、乾癬治療における生物学的製剤には、抗TNFα抗体製剤(TNF阻害薬)(アダリムマブ、インフリキシマブ)、抗IL-12/23p40抗体製剤(ウステキヌマブ)、IL-17阻害薬(セクキヌマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブ)と抗IL-23/p19抗体製剤(グセルクマブ)があります。

TNF阻害薬については、アダリムマブが皮下注射、インフリキシマブが点滴静注であり、施設の状況によって使い分ける場合があります。乾癬性関節炎の第一選択はTNF阻害薬ですが、効果不十分例や使用できない場合はIL-17阻害薬を選択します。

速やかな効果発現を期待するならIL-17阻害薬、注射時の痛みを嫌がるようなら、アダリムマブなどの痛みの少ない薬剤を選択します。また、自己注射を嫌がる、あるは自己注射ができないという患者さんにはグセルクマブやウステキヌマブを使用します。このように乾癬の病態や症状、さらに自己注射ができるか、注射時の痛みにある程度耐えられるか、というような観点で薬剤を選択しています。

生物学的製剤はいつまで続ければよいか、ということについてはまだ定見はありません。継続使用が好ましいと思いますが、中止後再燃時の再投与の効果の検証や、経済的な問題なども考慮しながら検討していく必要があるのではないかと考えています。

生物学的製剤は、乾癬生物学的製剤検討委員会(旧.生物学的製剤安全性検討委員会)がまとめた「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2018年版)」に準じて使用します。記載されているように定期的に観察し、患者さんにはその間に何かあったらすぐに病院に来ていただいて対応する必要があります。

一方で、長期使用で問題となるのが二次無効の場合があることです。そのような場合は他の製剤への切り替えが必要です。

13.生物学的製剤の使用時も外用療法を併用する。目次へ

生物学的製剤を使用中でも、外用療法・保湿スキンケアは併用します。

生物学的製剤の導入時はもちろんのこと、PASI-90くらいで皮疹が残っているような場合や、再燃する部位にも外用療法を続けます。PASI-100の状態が続いている場合なら、保湿剤の塗布だけでも良いと思いますが、皮疹がある限りは保湿スキンケアも含めて外用療法は継続していただきます。

14.生物学的製剤使用時の病診連携は、1例目にスモールミーティングを開催して詳細な引継ぎを行う。目次へ

生物学的製剤を使用できる施設は、生物学的製剤が登場した当初、日本皮膚科学会が定めた使用施設条件を満たす承認施設に限られていました。生物学的製剤の導入後は定期的に通院していただく必要がありますが、現在では頻回の通院が困難な患者さんの利便性が考慮され、承認施設で寛解導入された患者さんを対象に緊密な病診連携に基づいてクリニックでの維持療法を目的とした使用が認められるようになりました。当院も承認施設の一つとして、他施設からご紹介いただいた患者さんに生物学的製剤を導入し、紹介元の施設にお戻ししています。

生物学的製剤の導入に対して積極的にお考えの先生は多くいらっしゃると思いますが、承認施設から患者さんを戻されても、使用経験がない施設だとその受け入れは容易ではないと思います。そこで当院では、最初の1例について両施設の医師だけでなく看護師さんや薬剤師さん、事務職員さんなどの関係者を交えたスモールミーティングを開催しています。1例目をこのように詳細に引き継ぐと、2例目以降は簡単な引継ぎで済ますことができます。

- 乾癬患者さんの生活指導 -

15.肥満の乾癬患者さんには、まずは減量していただく。目次へ

乾癬の悪化因子には、風邪やインフルエンザなどの感染症があるので、日常生活における感染症対策が必要です。また、睡眠不足やストレス、過度の飲酒や喫煙など悪い生活習慣も乾癬の悪化のリスク因子です。

さらに、患者指導において重要なことは、肥満患者さんのウェイトコントロールです。乾癬の患者さんには肥満が多いこと5)、乾癬とメタボリックシンドロームとの関係が指摘されていますが6)、実際に減量が難治性の乾癬皮疹の改善につながることを経験しています。

この点について私たちは、メタボリックシンドロームを合併した乾癬患者さんの方が、合併していない患者さんに比べて有意に重症度が高いことを報告しています(Takahashi H, et al,:J Dermatol Sci. 57;143-144, 2010)7)。また、乾癬は心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性病変の合併が多く、心血管イベントの独立したリスク因子であることが明らかにされています8)

したがって、乾癬患者さんには規則正しい生活が重要です。寝不足にならない、禁煙する、深酒をしない、さらに肥満傾向の患者さんにはウェイトコントロールをしていただくように指導します。

一方で、入浴については普通に入っていただくことで構いません。ただし、鱗屑を少しでも落そうとしてゴシゴシと擦ることがないようにしていただきます。そして、入浴後はしっかりと外用薬と保湿剤を塗布することを指導します。入浴後は肌もしっとりしていますし、前日に塗布した薬が洗い流されているので薬の浸透率も高いと思います。

その他、日光に当たることは乾癬にとって良いことです。患者さんが日光過敏でなければ、夏場など日差しが良い時に少し日焼けをすれば症状が改善するということもあります。ただし、強い日差しの下で急速に焼くと逆効果になるので、適度な日光浴で徐々に焼くことを指導し、その後に外用薬をしっかりと塗布していただきます。

文献

  • 1)飯塚 一: 乾癬治療のピラミッド計画 2017. J Visual Dermatol 16; 850-851, 2017
  • 2)Krueger GG, et al.: Comparative efficacy of once-daily flurandrenolide tape versus twice-daily diflorasone diacetate ointment in the treatment of psoriasis. J Am Acad Dermatol 38; 186-190, 1998
  • 3)中川 秀己, ほか: 乾癬における患者満足度調査(第二報)-患者満足度に及ぼす因子の検討-.日皮会誌 115; 1449-1459, 2005
  • 4)川島 眞, ほか: 皮脂欠乏症患者を対象としたヘパリン類似物質含有フォーム状製剤の有効性および安全性の検討. 皮膚の科学 16; 356-365, 2017
  • 5)Kumar S, et al,: Obesity, waist circumference, weight change, and the risk of psoriasis in US women. J Eur Acad Dermatol Venereol 27; 1293-1298, 2013
  • 6)Gisondi P, et al,: Prevalence of metabolic syndrome in patients with psoriasis: a hospital-based case-control study. Br J Dermatol 157; 68-73, 2007
  • 7) Takahashi H, et al,: Prevalence of metabolic syndrome in Japanese psoriasis patients. J Dermatol Sci. 57; 143-144, 2010
  • 8) Abuabara K, et al,: Cause-specific mortality in patients with severe psoriasis: a population-based cohort study in the United Kingdom. Br J Dermatol. 163; 586-592, 2010

尋常性乾癬治療の基本とちょっとしたコツ

尋常性乾癬治療の基本とちょっとしたコツ

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