Ⅲ.尋常性乾癬治療のこれから -乾癬治療における皮膚科医の役割-
16.乾癬治療の基本は外用療法であり、患者さんにしっかり治療に取り組んでいただける
かが皮膚科医の腕の見せ所。目次へ
乾癬は、今やPASI 100(クリア)が可能な疾患となりましたが、すべての皮膚科医が生物学的製剤やMTXなどを使用できるわけではなく、乾癬治療の基本が外用療法であることは今後も続くと思います。そして、患者さんが外用治療にしっかりと取り組んでいただけるかどうかが、皮膚科医の腕の見せ所です。
そのために、患者さんとの信頼関係を築き、患者さんが治療に対するモチベーションを上げるようにすることが皮膚科医の役割だと思います。
たとえば、外用薬をきちんと塗布していないような患者さんには、“騙されたと思って塗ってください”と口酸っぱく説明します。そして、患者さんには“良くなりたい”という気持ちを持っていただくことが求められると思いますので、患者さんが外用薬をきちんと塗布されたことで皮膚の状態が少しでもよくなったら、“良かった、良かった、この調子で次も頑張っていきましょう”というような“ヨイショ”も時には必要です。患者さんも“良くなった”ことを実感されると、さらに頑張って塗布されるというように、医師のちょっとした配慮が患者さんの治療に対するモチベーションの向上にもつながります。
17.どんなに重症な患者さんにも、“良くなる治療手段がある”ことを伝える。目次へ
診察時には、患者さんの顔を見て、“今日の顔色は?”“今日の機嫌は?”くらいは診ること、また診察室への入室時の歩き方なども観察し、それから話を始めることも必要だと思います。
そして、皮膚科医は患者さんの目を見て話をすることが大切です。最近は、多くの施設で電子カルテが導入されているため、パソコン画面と皮膚だけに集中してしまいがちですが、患者さんが言いたいことを言えるような関係構築が必要だと思います。
どんなに重症な患者さんであっても、“治療手段がある”ことを、たとえば、生物学的製剤の投与前と投与後の写真を見せるなどしながら説明しています。決して患者さんが治療をあきらめてしまったり、投げやりにさせないことが大切です。
Ⅳ.おわりに
乾癬の治療は長期にわたりますが、PASI-100(クリア)も可能な時代となりました。さらに、乾癬に対する新たな生物学的製剤や低分子阻害薬などの登場が期待されます。このような状況において皮膚科医は、乾癬患者さんの状態がどんなに状態が酷くても、治療に対して悲観的であっても、患者さんを励ましながらしっかりと適切な治療を進めることが必要であり、そのためには患者さんに寄り添う姿勢が求められます。
さらに、乾癬は皮膚だけの病気ではなくメタボリックシンドロームや心血管イベントのリスク因子であることを念頭に、内科などの診療科とも密に連携しながら、常に全身を診る姿勢が必要です。
乾癬治療は長期にわたります。治療効果、副作用、経済的な要因、患者さんのQOL等を考えながら、その時々にどのような治療法がベストなのかを考え、患者さんに説明して治療を進めることが大切であると考えています。