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アトピー性皮膚炎治療の基本とちょっとしたコツ

皮膚疾患治療シリーズの情報誌『 To Dermatologist 』をwebコンテンツとしてご紹介していきます。

.抗炎症外用薬の使い方

4.まずは抗炎症外用薬で炎症目次へ

アトピー性皮膚炎治療では、“炎症を抑える”“炎症を抑えた状態を維持する”、つまり「寛解導入」と「寛解維持」の2stepが大きな流れになります。特に、寛解導入に時間をかけるのは好ましくないので、できるだけ速やかに炎症を抑えます。

そのために、一部の最重症例を除き、抗炎症外用薬(ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏)を用いて炎症を確実に速やかに抑えます。

5.抗炎症外用薬を赤くなったところの真ん中だけに塗るのではなく、
十分な量を十分な範囲に塗る。目次へ

この時に重要なことは、外用薬を“十分な量を十分な範囲”にしっかり塗布することです。「塗り薬をきちんと塗っています」と言われる患者さんでも、ごく少量を薄く、患部の真ん中だけに塗っているということが非常に多くあります。そこで、ガイドラインにも明記されているFTU(Finger Tip Unit)を実演してみると、大半の患者さんは「こんなに塗っていなかった」とおっしゃいます。また、発赤が何ヵ所かあったときは周囲の一見正常に見える部分にも炎症は潜在しています。患者さんには、十分な量を十分な範囲に塗布しないと炎症を確実に抑えることはできないことを認識していただくことが重要です。

さらに、皮膚の状態が良くなったからといって直ぐに塗布を止めるのではなく、ある程度しっかりと継続していただきます。患者さんに「きちんと塗り薬を塗ると皮膚の状態が良くなる」という“成功体験”をしていただくことが大切です(図1、図2)。

図1.アトピー性皮膚炎のリアクティブ療法
図2.アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法

6.ステロイド外用薬を怖がりすぎて治療が中途半端になることは良くないこと
を理解してもらう。目次へ

 患者さんを対象にステロイド外用薬に関するアンケート調査を実施したところ、半分以上の方は「怖いからできるだけ使いたくない」、さらに「絶対に使いたくない」とおっしゃる方も僅かですがいらっしゃいます。一方で、ステロイドの効果については多くの方が「塗れば効くことはわかっている」とおっしゃいます。“効くことはわかっているが塗りたくない”、このギャップがステロイド外用薬の塗布量を無意識に少なくしています。

その結果、“少し良くなっても直ぐに悪くなる”を繰り返し、長い目で見ると、ステロイド外用薬を長期間にわたり漫然と使用することになり、ひいては副作用の発現にもつながります(図3)。

図3.アトピー性皮膚炎のリアクティブ療法

7.確実に炎症を抑える強さの薬を選ぶ。目次へ

例えば、皮膚の炎症の程度が様々であるとして、個々の患者さんの炎症を抑えるちょうど良い、最低限のランクの薬を選択できればよいのですが、実際には困難です。そこで、速やかに炎症を抑えるためには炎症を確実に抑えることができる、強さが足りないよりも十分に炎症を抑えうるランクの薬剤を選択します。

8.治療初期は次回の診察までの間隔をなるべく短めにする。目次へ

患者さんの皮膚の状態から適切なランクのステロイド外用薬をある程度は判断できても、“思ったよりも効かなかった”“意外に効いた”という症例に遭遇することがあります。治療が軌道に乗ってきたら、患者さんも通院が面倒なので、受診していただく間隔をあけてもよいと思いますが、患者さんごとに適しているランク、様々な皮疹の状態に適したランクは微妙に異なり、この皮疹ならこの程度、というようには簡単に決められない場合もあるので、そのような時には治療開始後しばらくは次回の受診までの間隔を短めにした方がよいと思います。

すなわち、選択した外用薬がある程度確実に効くことが予想できれば、次回の診察は1ヵ月後で良いですが、どのような経過をたどるかわかりにくい場合や、患者さんご自身も“どうかな?大丈夫かな?”と感じているようなら、速やかに治療を軌道に乗せるためにも、次回の診察までの間隔を短めにします。具体的には、1回/1~2週くらいが適当です。炎症が治まってくれば1回/4週でも良いですし、治療目標に近づいたらさらに間隔をあけても良いと思います。

9.リアクティブ療法は決して悪い治療ではないが、週に2~3回も再燃する場合は
プロアクティブ療法が有用である。目次へ

プロアクティブ療法が注目されていますが、それと対比されるリアクティブ療法、すなわち再燃時に外用薬を塗布する治療法は、決して悪い治療法ではありません。再燃時の外用薬塗布が1~2回/月程度の軽症患者さんでは、“悪くなったところに塗布すればよい”という方法はとてもわかりやすく、頻回でなければ、それが患者さんの理解が得られやすい治療法です。

ところが、症状が悪化して外用薬の塗布回数が2~3回/週もあるというように、頻回に再燃を繰り返す場合にはプロアクティブ療法が必要となります(図2)。ですから、リアクティブ療法が治療の基本であることに変わりはありませんが、塗る・止める、を繰り返す場合はプロアクティブ療法が大きな治療選択肢になります。プロアクティブ療法は、用語としては非常に浸透してきた、寛解導入後の寛解維持の治療法ですが、十分に寛解導入を達成してからプロアクティブ療法に移行することが重要です。

寛解導入ができているかどうかは、痒みの有無、皮疹の見た目、皮膚の硬さや肥厚、さらに血清TARC値により評価します。ただし、頻回に採血できない場合もあるため、痒み・皮疹の症状に加えて、医師の視診と触診が判断の拠り所となります。

10.プロアクティブ療法時のステロイド外用薬は、ランクを下げるのではなく、
塗布回数を減らす。目次へ

“1ランク落としたら効果もその分落ちるか?”。ステロイドの強さと皮膚症状の治まり方は患者さんによってかなり異なります。“ランクを落とした方が良いか”“塗布回数を減らした方が良いか”と聞かれることがありますが、毎日の塗布で効果を把握できている患者さんでは、ランクを下げるのではなく、塗布回数を減らす方がある程度効果の予測ができて良いと思います。また、ランクを徐々に下げていくよりも、塗布回数を減らす方が患者さんにとってはやりやすい面もあります。

もっとも、ステロイドのランクを下げないとは言っても、寛解導入時にストロンゲストが必要な患者さんで、そのままプロアクティブ療法を行うことは、現実的ではありません。

11.以前に皮疹があったところにはすべて塗布するが薄くても良い。目次へ

プロアクティブ療法の意義は2つあります。一つは、再燃前に塗るという予防的な意味合い、もう一つは、見た目だけでは判別し得ない潜在的な炎症も治療対象として、それにも塗るという意味合いです。ですので、基本的には寛解導入の時と外用範囲は変えずに、以前皮疹があったすべての部位に外用してもらうように説明しています。ただし、皮疹が明らかではない部位に外用することに抵抗がある患者さんもいるので、寛解維持の際の外用量は少なくても良いことを説明します。そのような場合でも、ある程度具体的な外用量、(例えば1回外用量は10gにしましょう、5gにしましょう、など)を患者さんごとに指示すると、うまく寛解維持できることが多いです。

プロアクティブ療法の継続で寛解状態が維持できるようになると徐々にリアクティブ療法のようになってくることがあります。例えば、2回/週程度の塗布が、そのうち1回/週以下になる、さらには悪い時だけ塗る、というようになることがあります。そのように再燃の頻度がかなり低くなった場合には、“悪くなった時に塗りましょう”、という対応で問題はありません。ですから、治療目標に到達してその状態が長く続けば、プロアクティブ・リアクティブというよりも、皮膚の症状に応じた対応で良いと思います。

アトピー性皮膚炎治療の基本とちょっとしたコツ

アトピー性皮膚炎治療の基本とちょっとしたコツ

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