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ケロイド・肥厚性瘢痕治療の基本とちょっとしたコツ

皮膚疾患治療シリーズの情報誌『 To Dermatologist 』をwebコンテンツとしてご紹介していきます。

.一般施設におけるケロイド・肥厚性瘢痕診療の実際-治療-

6.一般施設では疼痛を与えない治療から開始する。目次へ

一般施設ではできるだけ痛みを伴わない、非侵襲的で比較的安全な治療を早期に開始します。一般施設でできる治療には、副腎皮質ホルモン剤(テープ、注射)、各種外用剤(副腎皮質ホルモン剤、非ステロイド系抗炎症剤、ヘパリン類似物質、シリコーンジェル・クリーム)、内服薬(トラニラスト、柴苓湯)、安静・固定療法、圧迫療法があります(図4)。しかし、これらの保存的治療でも治療が困難な場合は専門施設に紹介することをお勧めします。

図4.一般施設での加療

7.JSW Scar Scale(JSS)2015評価表の活用は患者さんの治療に対するモチベーションの向上にもつながる。目次へ

JSW Scar Scale(JSS)2015の評価表は6項目で構成されており、各項目は0~3点で評価します。評価の点数が下がれば、現在行っている治療が有効であることがわかります。

ケロイド・肥厚性瘢痕の治療は長期間にわたるため、定期的な診療において評価表は治療経過の推移を確認するために活用できます。点数が下がれば、患者さんの治療に対するモチベーションの向上にもつながります。

8.小児は弱いステロイドテープ剤の3ヵ月貼付から始める。目次へ

診断・治療指針では、治療アルゴリズムを小児(20歳未満)と成人に分けて紹介しています。なぜなら、小児は皮膚が薄く外用薬が浸透しやすいため、効きやすいからです。

小児における治療の第一選択は弱いステロイド(フルドロキシコルチド)のテープ剤で、3ヵ月間を目安に継続貼付します。これで効果があれば、さらに3ヵ月間継続貼付しますが、効果がない場合は強いステロイド(デプロドンプロピオン酸エステル)のテープ剤に切り替えて、さらに3ヵ月間継続貼付します。ステロイドテープ剤の貼付で、患部が軟化・平坦化したら貼付時間・間隔を徐々に減らし、保湿剤などの外用剤に変更します。効果がない場合は、専門施設に紹介します。(図5)

9.成人は強いステロイドテープ剤の3ヵ月貼付から始める。目次へ

成人は、皮膚も厚くなりますし、身体にかかる負荷も強くなり、動く力も強くなるので、強いステロイドテープ剤が第一選択となります。

小児と同様に3ヵ月間を目安に継続貼付し、効果があればそのまま継続します。ステロイドテープ剤の貼付で、患部が軟化・平坦化したら貼付時間・間隔を徐々に減らして、保湿剤などの外用剤に変更します。効果がない場合はステロイドテープ剤の貼付を継続しながら、さらにステロイドの注射剤(トリアムシノロン)を適宜併用します。それでも効果がなければ専門施設に紹介します。(図6)

図5.治療アルゴリズム-小児-(20歳未満を小児の目安とする)
図6.治療アルゴリズム-成人-

10.可動部位ではステロイドテープ剤を貼付し、さらに動かさないように固定テープを大きく貼る。目次へ

このように、全てのケロイド・肥厚性瘢痕はステロイドテープ剤で治療を開始し、3ヵ月間は貼付を継続します。弱いステロイドテープ剤で効果がなければ強いステロイドテープ剤に変更し、さらに3ヵ月間は継続貼付するというように、ステロイドテープ剤による治療を3 ~ 6ヵ月間は続けることが基本となります。

ステロイドテープ剤を使用する際のコツとして、可動部位で病態が悪化することから、ステロイドテープ剤を病変部に最小限に貼付し、さらに張力を軽減するためにテープやジェルシートを病変よりも大きくしっかりと貼付して固定することもよい方法です。

ただし、病変部の拘縮が非常に強い場合は外科的治療が第一選択になります。また、患部が感染によって化膿している場合も外科的な処置が必要となるため、ステロイドテープ剤の適応とはなりません。

11.病変部が軟化・平坦化するまで貼付の範囲を徐々に狭めながらステロイドテープ剤の貼付を継続する。目次へ

ステロイドテープ剤による治療では、病変部分が徐々に軟化し、さらに平坦化してきます。ただし効果を得るためには、ステロイドテープ剤を最低でも3ヵ月間は必ず継続貼付することが必要です。弱いステロイドテープ剤であっても6ヵ月間の継続貼付で効果を実感することができます。

ケロイド・肥厚性瘢痕は長期間の治療が必要であり、完治するまで治療を継続することが大切です。程度にもよりますが、ステロイドテープ剤の効果が確認できれば、さらに1~2年は治療を継続します。

ステロイドテープ剤の使用で改善の兆候がみられながらも、病変の一部分だけが硬く隆起しているような場合、ステロイドテープ剤は隆起している部分だけに貼付するというように、貼付の面積を減らしていくことも必要です。わずかでも隆起が残っていると、そこから悪化することがあるからです。したがって、貼付の範囲を徐々に狭めながら、最終的に全体が軟化・平坦化するまで継続することも大切です。

病変部が軟化・平坦化して、触っても病変が判別できないようになっても、赤みが残る場合があります。そのような状態でさらにステロイドテープ剤の貼付を続けると皮膚が菲薄化して毛細血管拡張が出現してしまいます。したがって、そのような場合はステロイドテープ剤の貼付を中止し、ヘパリン類似物質や非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)などの外用に移行します。

12.患者さん・ご家族に治療継続の必要性を理解してもらう。目次へ

患者さんにはステロイドテープ剤による治療を継続する必要があること、治療に時間がかかること、病変部が軟化・平坦化するまで治療を継続することの必要性を十分に説明し、理解していただくことが重要です。治療の途中で貼付を中止してしまうと、完全に鎮静化していない炎症が再燃してしまうからです。私はいつも写真を見せて「治療は長くかかりますが必ず良くなります」、「1~2年はしっかり貼ってください」と説明しています。

1日1回貼り替えるという手間はありますが、毎日きちんと貼り続けていただくことがケロイド・肥厚性瘢痕を完治に導くためには絶対に必要です。小児の場合はお母さんなどご家族に十分に治療継続の必要性を説明し、確実に毎日貼り替えるようお願いしています。

13.お風呂の中でゆっくり剥がし、お風呂上りに新しいステロイドテープ剤を貼る。目次へ

ステロイドテープ剤を貼り替える際、皮膚が乾燥した状態でテープを勢いよく剥すと皮膚の角質までも剝がれてしまい皮膚にダメージが起こることがあるので、ゆっくり剝がすようにします。お風呂の中でゆっくりと剝がし、お風呂あがりに新しいステロイドテープ剤を貼付することをお勧めしています。

ステロイドテープ剤の貼付で、刺激性接触皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎を生じることがあります。刺激性接触皮膚炎が発生した場合は、貼り替えの頻度を減らすことで改善することがあります。たとえば、1日貼って2日は空けてまた貼るというような方法で対処できます。アレルギー性接触皮膚炎を生じると、ステロイドテープ剤は使用できないので、他成分のステロイド軟膏など他の外用剤に切り替えます。

ステロイドテープ剤の添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対しては大量又は長期にわたる広範囲の使用を避けること」とあります。ケロイド・肥厚性瘢痕は妊娠中に悪化することから、妊娠前にしっかりと治療し、妊娠中は使用を最小限にとどめるようにします。

14.ステロイド注射剤は注射針を正常皮膚との境界部に刺入する。目次へ

ステロイド注射剤を使用する際に注意すべきことは、ケロイド・肥厚性瘢痕と正常皮膚の境界部からケロイド・肥厚性瘢痕の最深部や炎症の強い辺縁部を狙うように注射針を刺入することです。病変の硬い中央部の線維塊に注射すると激しい疼痛を伴うからです。投与の頻度は、1~2ヵ月に1回で十分です。少しでも病変部が軟化してきたら、ステロイドテープ剤による治療を主にしていただきステロイド注射は最小限にとどめます。

注射時の疼痛を少しでも緩和するために、局所麻酔薬を混和することや、注射前に麻酔のテープを貼付する、麻酔のクリームを塗布する、などの工夫も必要です。

また、ステロイド注射剤は妊娠中は使用禁忌であることは言うまでもありませんが、患部が目の周囲の場合には白内障・緑内障などの悪化のリスクがあるため極力控える必要があります。

15.適度な保湿は瘢痕の成熟化に重要。目次へ

ステロイドテープ剤による治療で病変部が軟化・平坦化しても赤さだけが続く場合は、ヘパリン類似物質などの保湿剤や、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)に切り替えます。赤さが取れるまで保湿剤による保湿、NSAIDsによって炎症を抑えることで、瘢痕の赤さが消失し成熟化していきます。

適度な保湿は、ケロイド・肥厚性瘢痕の成熟化に重要であり、1日数回しっかり塗布することが大切です。少しでも硬さが触れるような状態で保湿剤の塗布をやめてしまうと再発し、ステロイドテープ剤による治療に戻ってしまうことがあります。

16.内服薬(トラニラスト、柴苓湯)は他の外用剤との併用が有用。目次へ

トラニラスト、柴苓湯は痒みや疼痛、紅潮などの自覚症状の改善に効果があります。しかし、内服薬の単独治療ではケロイド・肥厚性瘢痕を完治させることは困難です。診断・治療指針にも、「内服薬単独での著効は期待できないため、他の外用剤などと複合的に用いると良い」と記載しています。

トラニラストは、副作用に膀胱炎様症状が報告されているので、頻尿や排尿痛、血尿、残尿感などの泌尿器症状が現れたら服用を中止します。柴苓湯は間質性肺炎の副作用が報告されているので、発熱や咳嗽、呼吸困難、肺音の異常など、少しでも身体に異常があれば服用を中止します。

17.テープやジェルシートで固定すると張力が軽減され症状が軽減する。目次へ

ケロイド・肥厚性瘢痕は日々の張力で炎症が強くなり悪化するため、特に可動部位に病変がある場合は、テープやジェルシートで固定することで張力を軽減すると症状は軽減します。

貼付の際にはケロイド・肥厚性瘢痕の病変よりも大きくしっかりと貼ることが大切です。また、ステロイドテープ剤との併用も効果的です。

文献

  • 1)瘢痕・ケロイド治療研究会 http://www.scar-keloid.com/download.html
  • 2)瘢痕・ケロイド治療研究会 ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018(全日本病院出版会)
  • 3)Ogawa R. Diagnosis and Treatment of Keloids and Hypertrophic Scars-Japan Scar Workshop Consensus Document 2018. Burns Trauma. 2019 Dec 27;7:39. doi:10.1186/s41038-019-0175-y. eCollection 2019.
  • 4)Arima J et al Relationalship between Keloid and Hypertension. J Nippon Med Sch 79 494-5;2012
  • 5)Akaishi S. et al The relationalship between keloid growth pattern and stretching tension:Visual analysis using the finite element method. Ann Plast Surg 60 445-51;2008

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