Ⅴ.専門施設への紹介
18.治療に難渋する場合は専門施設に紹介する。目次へ
ケロイドの数が多く重症の場合、病変部が感染により化膿している場合、拘縮・引きつれの症状が強い場合、ある程度の改善の兆候がみられても、その後に改善がみられない場合など、一般施設では治療に難渋すると思われる患者さんについては、是非、専門施設に紹介していただきたいと思います。
専門施設ではこれまでご紹介した保存的治療に加えて、手術、放射線療法、レーザー治療やメイクアップ治療などを必要に応じて組み合わせて治療を進めていきます。
19.ケロイド・肥厚性瘢痕は早期からの適切な治療によって完治に導くことができる。目次へ
ケロイド・肥厚性瘢痕は腫瘍ではなく炎症を特徴とする疾患です。したがって、有効で適切な治療を行うことで必ず良くなりますし、完治できる疾患です。むしろ、効果があまり期待できないような治療を漫然と続けている状態が最も悪いので、そのようなときには速やかに専門施設にご紹介いただきたいと思います。
現在の治療が本当に有効なのか、不安に思っている患者さんも少なくないと思います。そのような場合には早期から適切な治療を継続すれば完治の可能性が高いことをお伝えすることも大切です。
ケロイド・肥厚性瘢痕は、早期からの治療介入によって早く完治に導くことができる疾患です。しかし、発症後に時間が経ってしまった場合は、治療により多くの時間を必要とします。たとえば、手術後であれば早い方なら1ヵ月、遅くても2 ~ 3ヵ月で傷痕が少しずつ赤く隆起してくることがあるので、気付いた時点ですぐにステロイドテープ剤による治療を開始し、少しでも治療に難渋すると思った場合には早期に専門施設にご紹介いただくことをお勧めします。
Ⅵ.おわりに
ケロイド・肥厚性瘢痕で悩んでいながら、苦痛を抱えながらも適切な治療を受けていない患者さんは数多くいらっしゃいます。たとえば、手術を受けた患者さんは手術後瘢痕ができると必ず主治医・執刀医に相談されますが、その医師がケロイド・肥厚性瘢痕の知識が不十分で「これは体質だから放っておけば治る」と説明され、実際に治らないままというケースも実際にあるようです。ケロイド・肥厚性瘢痕は単に見た目の問題だけではありません。患者さんにとっては痛い、痒い、そして眠れない等の症状を抱え、QOLは大きく低下しています。
われわれ形成外科医は、ケロイド・肥厚性瘢痕による苦痛に悩まれている患者さんを治したいという強い思いで診療しています。たとえ、ステロイドテープ剤やステロイドの注射で治療が困難な場合であっても、手術療法、放射線治療などの治療手段があります。
ケロイド・肥厚性瘢痕は皮膚病変であり、また、ニキビ治療後に発症する場合もあることから、特に皮膚科の先生方はこの疾患に遭遇される機会も多いと思われます。多くの皮膚科の先生方や、外科や産婦人科など手術をされる先生方も含めて、ケロイド・肥厚性瘢痕の正しい診断と適切な治療によって、どんなに酷い状態であっても完治できる疾患であることを是非ご理解いただきたいと願っています。
文献
- 1)瘢痕・ケロイド治療研究会 http://www.scar-keloid.com/download.html
- 2)瘢痕・ケロイド治療研究会 ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018(全日本病院出版会)
- 3)Ogawa R. Diagnosis and Treatment of Keloids and Hypertrophic Scars-Japan Scar Workshop Consensus Document 2018. Burns Trauma. 2019 Dec 27;7:39. doi:10.1186/s41038-019-0175-y. eCollection 2019.
- 4)Arima J et al Relationalship between Keloid and Hypertension. J Nippon Med Sch 79 494-5;2012
- 5)Akaishi S. et al The relationalship between keloid growth pattern and stretching tension:Visual analysis using the finite element method. Ann Plast Surg 60 445-51;2008